本研究ユニットは、中国・韓国の大学との研究ネットワークおよび東京証券取引所の協力を得て、拠点に属する研究者が現地の市場に赴いて制度や取引慣行、市場参加者の特徴などの市場特性を把握し、そこから着想を得て多様性を有するアジアの金融市場を適切に分析するための独自モデルを開発することを目的とする。また、市場の多様性を明示的に取り込んだモデルに基づいてアジアの金融市場を取り巻く課題を明らかにすることで、実効性の高い市場改革の政策を提言する。

アジアの金融市場を適切に分析する独自のモデルを開発するために、金融市場における投資家の行動をミクロ的な視点から分析するファイナンス理論を中心として、マクロとミクロの視点を併せ持つ伝統的な金融論、企業分析に必要な会計学を基礎学問分野とし、この三つの学問分野の内容を基礎に再構築した新たな学問体系を構築する。 ファイナンス理論では、金融市場における資産価格の変動を理論的に分析するとともに、金融時系列分析の手法を用いて市場データを実証面から分析する。本拠点では、この分野の研究手法を主要なものと位置づけており、この分野の研究手法の基礎となる計量経済学や数学もカバーする。

金融論では、マクロ的な視点から資金循環や金融政策が、ミクロ的な視点から企業金融や家計の資産選択が取り扱われる。資金循環の分析により、国民貯蓄が株式・債券などの金融市場や銀行等の金融仲介機関を経て投資に向かうプロセスを把握し、各地域の金融システムの構造を明らかにする。ミクロ的な視点から金融市場の構造を明らかにしてファイナンス研究に活用する。会計学では、企業の経営状態に関する財務諸表と株価や企業価値との関連が扱われる。上海証券市場のような発展段階にある金融市場の分析では、個別企業のデータの生成に関する会計制度および会計実務、さらにそれらの背後にある歴史や文化を踏まえた財務諸表の分析が不可欠である。

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Empirical Study on Asian Financial Markets

Edited by Masayuki Susai Hiromasa Okada

本書は、2006年12月に長崎大学において開催された国際カンファレンス等で報告された東アジアの金融市場を対象とした金融および会計学における実証研究の成果をまとめたものである。