研究科長挨拶

研究科長挨拶



長崎大学大学院
経済学研究科長
宍倉 学
(SHISHIKURA Manabu)


「変化の中に普遍を求める醍醐味」


現在、日本は、少子高齢化、労働人口の減少、地域間格差、社会保障費の膨張など種々の課題に直面しています。目を世界に転じれば、グローバリズムとナショナリズムの拮抗、格差や貧困の拡大、国や地域または世代間の対立なども看過できない局面にあります。これら事象は、これまで当然視されていた社会システムや国民経済への懐疑をもたらすだけでなく、社会厚生とは何か、そもそも世界は何を追求していくべきなのか、といった根本的な問いを投げかけてきます。変転極まりない現代社会において、私達は自らが置かれている状況を的確に把握・分析し、取るべき戦略、進むべき方向性を見出す能力をもたねばなりません。

経済学・経営学が考察対象とする社会とは、異なる価値観・倫理観を持つ個人の営為の集合体です。それは物質とは異なり、捉えどころのない曖昧な存在かもしれません。しかし私たちは科学的方法論を用いることによって、曖昧な存在についても普遍的な理解=理論を得ることができ、それをもとに個別課題に対する実践的解決策を導くことができます。倫理・理論・実践の三位一体を具現化した知識の体系が経済学であり経営学です。

長崎大学大学院経済学研究科は、平成7年 (1995年) の設立以来、九州に立地する数少ない社会科学系大学院として多くの修了生を輩出してきました。修了生は実業界・官界のリーダーとして内外を問わず幅広く活躍しています。特筆すべきは、地域実業界や自治体での活躍を通して、中小企業支援、町おこし・島おこし、観光振興などの長崎固有の課題解決にその能力を発揮していることでしょう。また留学生の多くは修了後、母国と日本の友好親善等に活躍しています。

本研究科に設置されている博士前期課程経済経営政策専攻と博士後期課程経営意思決定専攻は、日常の背後にある社会や経済の問題を的確に捉え、その本質を追究する研究能力、問題解決能力、科学的かつ理論的根拠に裏打ちされた意思決定能力を身につけた人材を養成することを目的としています。世界の未来を担う熱意あふれる多くの皆さんが本研究科で学び、またともに経済及び経営の研究に携われることを願っております。

(2023年概要より抜粋)