区画法を用いた漂着ゴミ調査
区画法とは?
本調査は、マングローブ内に散乱する漂着ゴミ数・重量を明らかにするために実施する。
ゴミ重量分布を明らかにするために、漂着ゴミ標本(サンプル)を集める必要がある。本調査は、調査区画(コドラート)を設定しつつ調査する。コドラートを用いた調査法を、コドラート法という。コドラート法を用いる理由は、以下に示すとおり。
植生による影響を統制したい:多彩な形態を有する複数種の樹木がマングローブを構成する。呼吸根や幹枝高さや太さ、断面形状は場所毎に異なる。こうした差異は漂着ゴミをとらえる能力(確率)に影響すると考えられるため、統制する必要がある。ところが、マングローブ植生は直線上に分布するわけではない。植生分布域は空間内に複雑な形状を示す。砂浜や岩による海岸において用いるライントランセクト法はこうした複雑な形状に対処できない。
限られた調査期間内にできる:一般に、ライントランセクト法は相当な長さにわたって調査をおこなう。しかし、マングローブの植生は精確なライントランセクトをつくることを阻む。まっすぐ進んでいるつもりでもいつの間にやらあらぬ方向へ進むことも多い。コドラート法ならば配置を工夫することで、広い空間をカバーしつつ調査費用・時間をすることができる。
マングローブ植生を保護する:上記欠点を克服するため、複数方向に向かってライントランセクトを設けることもできるだろう。しかしこうした調査は、地面を踏み固め気根を折損させることにもつながる。調査が自然を破壊するとは本末転倒である。
調査区画座標
下図は調査区位置を示す。PCからアクセスしてマーカをクリックすると、調査区番号と座標(10進法)が表示される。調査区総数は18。いずれも2018年9月以降設けた定点である。
調査区は10m四方。10mという大きさは、用いるGPSのCEP(半殺必中界)と環境省による既存研究、および予備調査から判断した実行可能性にもとづいて決定した。10mより大きな調査区は、マングローブにはばまれて構築困難である。10mより小さいコドラートは植生による影響を加味するには不足でありかつGPS誤差に由来する誤差を回避できない。
下表quadrat.idは調査区識別番号、x1は調査区左端経度、x2は右端経度、y1は下端緯度、y2は上端緯度を各々示す。GPSが表示する座標よりも有効桁数が多いが、適宜座標値を丸めて使われたい。
id | lon.01 (x1) | lon.02 (x2) | lat.01 (y1) | lat.02 (y2) |
---|---|---|---|---|
220 | 106’’10’47.51589 | 106’’10’47.84486 | 9’’26’17.55124 | 9’’26’17.87789 |
227 | 106’’10’47.51589 | 106’’10’47.84486 | 9’’26’19.83777 | 9’’26’20.16442 |
410 | 106’’10’48.83178 | 106’’10’49.16075 | 9’’26’14.28477 | 9’’26’14.61142 |
729 | 106’’10’50.80561 | 106’’10’51.13459 | 9’’26’20.49106 | 9’’26’20.81771 |
822 | 106’’10’51.46356 | 106’’10’51.79253 | 9’’26’18.20453 | 9’’26’18.53118 |
1053 | 106’’10’53.10842 | 106’’10’53.43739 | 9’’26’11.99824 | 9’’26’12.32489 |
1132 | 106’’10’53.43739 | 106’’10’53.76637 | 9’’26’21.471 | 9’’26’21.79765 |
1138 | 106’’10’53.43739 | 106’’10’53.76637 | 9’’26’23.43088 | 9’’26’23.75753 |
1280 | 106’’10’54.42431 | 106’’10’54.75328 | 9’’26’20.81771 | 9’’26’21.14436 |
1323 | 106’’10’54.75328 | 106’’10’55.08226 | 9’’26’18.53118 | 9’’26’18.85783 |
1357 | 106’’10’55.08226 | 106’’10’55.41123 | 9’’26’13.30483 | 9’’26’13.63148 |
1554 | 106’’10’56.39815 | 106’’10’56.72712 | 9’’26’12.32489 | 9’’26’12.65153 |
1808 | 106’’10’58.04301 | 106’’10’58.37198 | 9’’26’13.63148 | 9’’26’13.95812 |
2072 | 106’’10’59.68787 | 106’’11’0.01684 | 9’’26’18.20453 | 9’’26’18.53118 |
2085 | 106’’10’59.68787 | 106’’11’0.01684 | 9’’26’22.45094 | 9’’26’22.77759 |
2090 | 106’’10’59.68787 | 106’’11’0.01684 | 9’’26’24.08418 | 9’’26’24.41083 |
2234 | 106’’11’0.67479 | 106’’11’1.00376 | 9’’26’22.1243 | 9’’26’22.45094 |
2280 | 106’’11’1.00376 | 106’’11’1.33273 | 9’’26’20.81771 | 9’’26’21.14436 |
Shape of survey quadrat. Size of that is 10m (10,000mm) in height and 10m (10,000mm) in width. Four white circles demonstrate positions of bamboo sticks to fix the shape. Four black squares demonstrate position of core sampling.
用具
用いる機器型式および概要は以下に示すとおり。
- GPS:Holux社製M-241。現在位置を表示させるのみならず、緯度・経度・高度を定めた頻度(今回は5秒)にて記録するロガーとしても使える。防水ではないから、使用時はラップフィルムにて巻き付けて防水を図る。精度はカタログスペック(CEP=3m)よりも高く、実際のCEPは1mないし1.5m程度と考えられる。GPSをつかまえ測位開始するまでに5分程度かかる。電池(単3)はロガーを動作させても1日程度は使える。ただし2日はもたない。毎日充電した電池と交換したほうがいい。
- カメラ:Nikon社製AW-130。防水。写真に緯度・経度情報を付することはできる。高度まではつけられない。GPS捕捉に最大5分程度を要する。使用時は出発前に電源を投入しGPSを機能をONにしてGPS衛星を捕捉させて使う。GPSロガー機能も備えるが、電池がもたないので使わない。
- スマートフォン:日常的な連絡手段として用いつつ地図を表示させるために使う。内蔵GPSによる位置表示は見た目よりは精確だが、ばらつきも大きい。Google mapsや記録用カメラをコントロールするアプリをあらかじめインストールする。Google MapsについてはGoogleアカウントによるログインも必要。防水ではない。調査中はジップロックに入れて持ち歩く。泥がついたらその日のうちに泥を取り除く。
- ロープ:10m/本を4本。調査区構築に用いる。コドラート4隅は上表に示した位置をGPSで確認する。ロープはあらかじめ端部をアイスプライス加工して竹竿にかけやすくする。写真撮影に利便を図るため、中点に黄色いテープを巻き付ける。調査終了後は廃棄する。洗浄してもロープに付着した泥に含まれる成分が腐敗して異臭を放つため。
- 竹竿:コドラート4隅を与えるために使う。長さは2m。定点観測するため調査終了後1本のみ定置させる。竹竿は深々と露盤に達するまで差し込むこと。軽く挿しただけだと流水による力で抜けてしまうことがある。竹竿はカントー市にて調達する。ソクチャンやMo O近隣において竹竿は高価であるうえに数が揃わない。調査終了後は廃棄する。
- 秤:「はかり」と読む。回収した漂着ゴミ重量を測定するために使う。泥がつかないよう、紙やバットを敷いた上で計量する。日向に放置すると破損する。使用しないときは冷暗所に保管する。使用時もできるだけ日陰にて測定する。
- 紙台:泥内から採取した洗浄後の細かいゴミや大きな漂着ゴミを写真撮影する際に用いる。紙上には\(\LaTeX\)コマンドを用いて定規目盛を付し、かつ調査区番号と通し番号、採取日を付す。
手順
- 必要な物品を準備する
- 飲水:500ml水ペットボトル2本(1.0L)は持参する。塩分を補給する飴類も持参するとよい。熱中症対策をうたう飴を日本から持参するとよい。
- 竹竿:1グループあたり4本
- ロープ:4本/グループ。
- ゴミ袋:回収したゴミを収納する袋。
- GPS:2個/グループ。
- カメラ:2台。
- スマートフォン:1台。
- トイレットペーパー:非常用。すぐそこにある危機が人権問題へと発展しかねない。
- その他:帽子や地下足袋など装備品は常に点検する。防水が必要ならばジップロックに入れて持参する。
調査区画へ向かう:スマホにインストールしたGoogle Mapsによる指示を頼りに、およその位置まで向かう。GPSによる座標も参照すること。
コドラート4隅に竹竿をたてる:体重をのせて深々と差し込む。コドラート南西側から南東、北東、北西へ向かって順番に立てる。写真(次項参照)に足跡を写さないように、手順4.が終了するまで、コドラート内部へ足を踏み入れてはいけない。足跡が残ると、撮影した写真を画像処理するときに支障がある。
4方向から写真撮影する:コドラート各辺中央部(ロープに黄色いテープが巻いてあるあたり)から、コドラート中心部へ向けて写真を撮影する。コドラート全景を最初に撮影する。
ゴミを回収する:ゴミを適宜回収する。拾う前に、必ず直上から、困難ならば付近から写真撮影する。ゴミに泥がついていても差し支えない。なるべく気根を踏まないように。
回収したゴミを持ち帰る:集合場所まですべて持ち帰る。回収したゴミ袋は、回収用袋に入れて背負子で背負って持ち帰る。手で持ち帰ってもよい。調査区を次回再現するために、竹竿1本は回収しない。残置する
写真撮影する:漂着ゴミ写真をゴミ毎に撮影する。ゴミ下にスケール付き台紙を敷く。撮影は画角内にゴミがおさまるように、かつスケールつき台紙が画角内におさまるように撮影する。画角調整には三脚高さと延長角度にて調整する。延長にはカウンターウェイトを使ってバランスをとる。設定はカメラに任せる(オート)。望遠は使わない。
ゴミを計量する:漂着ゴミ湿重量を秤にて測定・記録する。泥はついていてもよい。
サンプルを袋に入れる:乾重量を記録するために、サンプルを最初に海水を使って洗浄する必要がある。しかしながらこの時点においては海水はない。干潮時間だからである。サンプルが混ざらないように、ひとつずつジップロックに入れる。ジップロックには事前にあるいは重量測定後に個別にシールを添付する。シールに記す番号様式と例は以下に示す通り。これとは別に日付を示すシールも後ほど貼付する。記録用紙に書かれた調査区番号と調査区内通し番号とが一致するようにする。
\[ \underbrace{1234}_{\substack{調査区\\番号}}\_\underbrace{001}_{\substack{調査区内\\通し番号}} \]
サンプルを洗浄する:潮が満ちたら、サンプルを海水を使って洗浄する。回収時に泥や汚れがついておらず乾燥しているゴミは洗浄しなくてもよい。泥や汚れがついている場合は洗浄する。ジップロック内部が汚れている場合、同様に洗浄すること。洗浄はバットやバケツなどの中にて実施する。絶対に容器外にて洗浄しないこと。流失してサンプルが失われると貴重なデータが失われ自然環境が汚染される。
サンプルを収納する:10にて洗浄したサンプルがはいったジップロックから空気を抜き、可能ならば水分もキムワイプにて拭くなどできるだけ除去する。運搬物重量を軽減しつつ残存する水分が腐敗することを防ぐため。袋内に入れている台紙はそのまま。
7.と8.をふたたび実施する:サンプルは研究室にてふたたび洗浄する。洗浄には清水(真水)を用いる。バット内に漬け込んで30分程度放置、爾後水中にて揺らして汚れを落とす。汚れが落ちた後、キムワイプにて水分と残存した汚れを拭き取り、冷暗所にて乾燥させる。乾燥後、写真撮影して重量測定する。
コアサンプリングによる分解漂着ゴミ調査
目的
コアサンプリングによる調査は、土壌中に存在する漂着ゴミ破片を検出、重量分布を明らかにすることを目的とする。コアサンプリングは、コアサンプラと呼ばれる管を利用して土壌中に存在する生物や物体、物質を土壌ごとサンプリングする手法である。
2018年9月および12月に実施した調査、および2017年に実施した調査において、泥をかんで泥から離れられなくなったゴミや枝にからんだゴミが、月日がたつにつれて見えなくなったり小さくなる様子が見られた。こうした事実は、漂着ゴミが定着しやがて物理的に分解されて流出ないし泥中に埋没していることが示唆する。泥中に埋没しているならば、泥中からゴミが見出されるはずである。流出しても近くにあればやはり泥中にあるであろう。そこでコアサンプリングによって、以下を明らかにすることを企図した。
本サンプリングによって、マングローブ域に滞留する漂着ゴミでもマイクロプラスチックでもないごみ量が明らかになる。マングローブ域に漂着した漂着ゴミが分解されマイクロプラスチックへと変化するメカニズムを明らかにする手がかりにもなろう。
用具
- コアパイプ:内径30mmのアクリル管。ゴム栓2つとセットにして使う。下(泥に差し込む側)から100mm、200mmところにビニールテープを巻く。
- ジップロック:よくあるジップロックMサイズ。採取する泥容積は70.6ml/10cmであるから、十分な容積であろう。1調査区あたり2袋*4箇所=12つ使用する。合計144袋使う。
- ラベルシール:調査区番号などを記したシール。
- ふるい:採取した泥から泥や砂礫を除去する。マイクロプラスチック(\(\leq\phi5mm\))より大きいものを除去するために、目地は2mmとする。
- バケツ:ふるいにのせた泥に海水をかけて泥や砂礫を除去するために使う。プラスチック製で水が入ったときに重すぎないもの。現地調達可。
- 青シート:漂着ゴミ計量や泥洗浄時に日除けに使う。竹竿とロープをつかって日よけをこしらえる。よくある3.6*5.4mにて可。番手は#2000程度。日よけでも可。
- バット:樹脂製の一般的なもの。海水で粗く洗浄したゴミを清水にて洗浄するときに用いる。
- 精密はかり:漂着ゴミや泥から取り出したゴミ重量を計量する。漂着ゴミに用いるはかり(0.1g単位3kg程度まで)と泥から取り出した小さなゴミを測定するもの(0.001g単位100gまで)とを各々。
- ピンセット:100円ショップ品で十分であるが、先端はよく焼入しかつ研いで、細かいものをつかめるよう加工する。
- キムワイプ:あたりを清掃するために。
- マジックペン:いろいろ。ないと困るの。
作業準備
- コアサンプラをつくる:端部から100、200mm箇所にビニールテープを巻きつける。終了後、挿入方向を示すラベルを貼付する。
ラベルをつくる:泥中から採取した小さいゴミを保管するジップロックに貼付する。前者は1枚、後者は3枚(ねじ込み式蓋、ねじ込み式容器、保管用ジッパー式プラ袋各1)を作成する。様式は以下に示す通り。
\[ \underbrace{1234}_{\substack{調査区\\番号}}\_\underbrace{A}_{\substack{調査区内\\場所記号}}\_\underbrace{100}_{\substack{深さ}} \]
必要な道具を詰め合わせる:漂着ゴミ計量用品共々、段ボールや折りたたみプラ箱に収納・持参する。
Core sampler
手順
調査班作業手順
- 漂着ゴミ回収グループと調査区へ向かう:コアサンプリングは1名にて実施する。ゴム栓を両端に固く挿入したアクリル管をエコバッグに収納・持参する。直接アクリル管を手で持って運んではいけない。粘度が低いサンプルは落としてしまうと調査不能となる。
- 調査点を同定する:漂着ゴミ回収グループによる調査区設定を待つ。
- コアサンプラを挿す:ゴム栓を双方抜いたコアサンプラをコドラート各頂点からおよそ200mm程度離れた場所にて、鉛直に塩ビ管上端に泥が達するまで挿し込む。
Insert a core sampler
- ゴム栓を挿入する。
Insert a rubber plug into upper side.
- 片方にゴム栓を挿入したコアサンプラは、回すように引き抜く。
Pull out the core sampler while swinging.
- 引き抜いたらもう片方にもゴム栓を挿入する。引き抜くとき、絶対に鉛直に引き抜いてはいけない。サンプルが重力で落下することがある。
Insert another rubber plug into lower side.
- 持ち帰る:コアサンプラを袋に入れて持ち帰る。途中で落とさないように、ゴム栓が抜けるような衝撃を与えないよう、慎重に運搬する。
- 計量班に引き渡す:コアサンプラごと引き渡す。計量班から、次調査区画にて使うコアサンプラとゴム栓を受け取る。
計量班作業手順
- 泥をジップロックに移す:調査班から受け取ったサンプルをジップロックへ移す。表面から200mmまでの泥をサンプルとしてほしい。
- コアサンプラ管を上側が上になるよう保持する:次工程にて内容物が飛び出ないようにするため。
- 上側ゴム栓を抜く:ゴム栓は再利用するから、袋などに収納する。泥面に落とすと間違いなく紛失する。
Pull out the upper-side rubber plug.
3. 中栓を挿入する:サンプルを押し出すために使う中栓を挿入する。内容物がはみ出ないよう注意する。やはり泥面に落とすと紛失するから、慎重に挿入する。中栓は断面が長方形(両端にあるゴム栓は断面が台形)であるから、区別はたやすい。
<div class="figure" style="text-align: center">
<img src="./img/fig_core/core_07.png" alt="Insert an intermediate rubber plug into upper side." width="30%" />
<p class="caption">Insert an intermediate rubber plug into upper side.</p>
</div>
4. 下側が上になるように保持しながら下側ゴム栓を抜く:内容物がはみ出ないよう注意。ゴム栓は再利用するから、袋などに収納する。泥面に落とすと間違いなく紛失する。
Pull out the lower-side rubber plug.
5. 中栓下面を200mm位置まで押し込む:表面から200mm以上深いところから採取されたサンプルを排除するため。押し込むには付属塩ビ管ないし短い竹竿を用いる。出てきた内容物はヘラないし割り箸にて切り取る。出てきた内容物はバットなどで受け取って、あとでまとめて投棄する。都度直接海に投棄しようとすると内容物がすべて飛び出る恐れがある。
Insert the intermediate plug to 200mm marker to drop unnecessary sample.
6. 中栓下面を100mm位置まで押し込み内容物をジップロックへ入れる:コアサンプラ下側をジップロック内に挿入後、中栓を所定位置まで挿入する。挿入しすぎないように注意。
Insert the plug to 100 marker to collect sample.
7. 中栓をすべて押し込み内容物をジップロックへ入れる:ジップロックを変えて、コアサンプラ下側をジップロック内に挿入後、中栓をすべて押し込む。ジップロック内に中栓が飛び出ても差し支えない。
<div class="figure" style="text-align: center">
<img src="./img/fig_core/core_11.png" alt="Insert another rubber plug into lower side (Continued)." width="100%" />
<p class="caption">Insert another rubber plug into lower side (Continued).</p>
</div>
8. ジップロックを締め込む:内容物が飛び出ないようジップロックを締め込む。完了したらジップロックをバットや容器に収納・整理すること。**絶対に放置してはいけない。踏みつけて内容物が飛散すると貴重なサンプルとデータが失われる**。
9. コアサンプラとゴム栓を洗浄する:コアサンプラ管内に大きな泥やゴミ、堆積物がない程度に洗浄する。バケツに張った水道水にてさっと拭う程度で十分。できるだけ管内に水分が残存しないよう、一定時間乾燥させる。
10. コアサンプラ管にゴム栓を挿入する
- 泥内サンプルを運ぶ:上記時点においてサンプルを洗浄する海水はない。干潮時間だからである。泥内サンプルを取り出す作業は十分に潮が満ちた後に実施する。作業にあたって、泥を洗浄する場所(桟橋先端)まで運搬する。かなり重いが、バケツやバットなど入れ物に容れて運搬する。
- 泥を篩(ふるい)に移す:ジップロック内にある泥をふるいにかき出す。だいたいかき出したら、袋洗浄を兼ねて袋内に海水を容れて海水ごとふるいに泥を移す。バケツやバット内に一度あけてからふるいに出してもよい。
- ふるいに海水をかけて泥を除去する:バケツやコップ、手桶を使って、ふるいに海水をかける。海水をかけると、泥やふるい目地よりも小さな物体は海中へ落下する絶対にふるい目地を棒などを突っ込んではいけない。 5. ザル内容物を容器に移す:ふるいに残った物体のうち、枝や葉など自然由来ではないものをすべてジップロックへ移す。指で移してもよいし、ピンセットを使ってもよい。
- 清水にて内容物を洗う:ホテルないし研究室にて実施する。現地で洗った小さいゴミをバットにあけて、清水に30分程度浸漬した後にサンプルをゆすって洗浄する。泥がとれればよい。
- 内容物を乾燥させる:洗った内容物を乾燥させる。小さいゴミはキムワイプに乗せて乾燥を促進させつつ散逸を防ぐ。
- 乾燥品写真撮影・計量する:紙台にのせて写真撮影後、計量する。
- 保管する:ジッパー式プラ袋に入れて保管する。袋は小さめにて差し支えない。
補遺
調査票と資料
本調査が収集するデータは、以下記録用紙2葉にすべて書き込む。調査票1には、回収した漂着ゴミ重量をゴミ毎に測定・記入する。調査票2には調査区四隅にてコアサンプリングした分解漂着ゴミ重量をゴミ毎に測定・記入する。漂着ゴミ写真を撮影するときは、漂着ゴミ写真撮影用台紙をゴミ毎に取り替えて用いる。台紙には通し番号を振っている。同通し番号と漂着ゴミを収納するジップロックに貼り付けた番号とが一致するようにする。
調査班と記録班
本調査は、調査班と記録班を設ける。
調査班は3人ないし4人にて構成する。調査班各員が担当する作業は以下に示すとおり。あらかじめ担当作業分担を決めておくとよい。チーム内で適宜担当を変えてもよい。
- 調査区作成およびゴミ回収:10m調査区をつくり、調査区内にあるゴミを回収する。1名ないし2名。
- 調査区作成およびゴミ回収:10m調査区をつくり、調査区内にあるゴミを直上から撮影する。1名ないし2名。
- コアサンプリング:10m調査区四隅にてコアサンプリングを実施、標本を持ち帰る。1名。
記録班は3名ないし4名にて構成する。記録班各員が担当する作業は以下に示すとおり。あらかじめ担当作業分担を決めておくとよい。チーム内で適宜担当を変えてもよい。
- 写真撮影:計測終了したゴミを撮影する。1名。
- 重量計測:回収したゴミ重量を秤で測定して値を読み上げる。1名。
- 記録:読み上げた値を確認しつつ記録用紙に書き込む。1名。
- コアサンプル処理:1名。
注意
安全第一:マングローブ内は危険に満ちている。おもな危険は人間を襲う害虫と汚れた水、体力を奪う泥である。まれに蛇もいる。害虫は虫よけを入念に吹き付けることである程度防ぐことができる。樹上にあるハチの巣は小さく見えにくいが周囲を飛ぶハチの存在で巣があることが予見できる。汚れた水は調査終了後に泥を落とすことですすぐことができる。満潮時に急激に潮位が上昇するので、集合時間までには必ず戻ること。
水分補給:フィールドは暑い。水分と塩分を補給することは必須である。水がはいったペットボトル数本と塩分を含む飴は必ず持参する。バナナや果物などミネラルを補給できる(かつ食べられない部分を捨てても自然に与える影響が小さい)食料を持参するとたのしい。
気根を踏まない:マングローブには気根や呼吸根と呼ばれる根を空中へ向ける種が存在する。これらは空気中から酸素を取り入れるためにある。根が水中に没しあるいは貧酸素環境におかれるマングローブにとって、気根は酸素を獲得する重要な手段である。気根は踏みつけるとたやすく折れマングローブが窒息する。
機器を丁寧に取り扱う:GPSやカメラ、携帯電話、タブレット、ふるいは精密機器である。落下・落水は機器損壊を招き調査を実行不能とする。丁寧に取り扱えば精確な測定が可能になりまた寿命も伸びる。ラップフィルムやジップロックに収納して取り扱えば汚損を軽減できる。
使用した機器は手入れする:GPSやカメラ、足袋など道具は使用後は清掃すること。特に機器類はキムワイプや綿棒を用いてきれいにすること。調査開始時には前日についた汚れを除去されていることが望ましい。防水をうたう機器も、清掃・乾燥が性能維持において前提である。
電池は毎日充電する:機器は電池で動く。電池は機器を使えば消耗する。ゆえに機器を使用後に充電が行う。さもなくば機器は使用不能になる。また、電池にとって熱帯は過酷であり放電しやすい環境である。最近の充電池は特性上、急激に電圧降下が発生する。ゲージに表示される容量は余裕があるように見えるが見えるだけである。
近隣各位を尊重する:近隣各位のご厚情あってようやく調査は実行可能になる。ことさらに留意されたい。調査がもたらす意義は様々であるが、住民にとって見れば生活環境を踏み荒らされているだけである。少なくとも本調査は近隣社会に短期的な経済的利益はもたらさない。