(Original: 15th. September 2018)
2018年8月30日から9月1日まで、Mo Oにて調査を実施した。得るところ大であったが、反省点もしきりであった。忘れないうちにこれらを示すところである。
反省編
マングローブに一人で入ってはいけません
Google street viewでMo Oについていろいろみてもらおうとマングローブに単独潜入し撮影を敢行、というところまではよかった。しかし、そこから先がダメだった。位置を見失い辛くも脱出、上陸したころには這々の体。もう少し脱出に時間がかかっていたら潮位が上昇して溺死(実話)するところだった。今考えても恐ろしい。
- マングローブ内では方向を見失いがち:マングローブ内部にいると、見た目にあまり変わらない木々に囲まれる。方向感覚がおかしくなる。コンパス必須。コンパスがあってもガタスキー道など歩きやすいところに沿って歩くと方位を見失う。油断禁物。
- 陸側は硬くて歩きやすい:海に近くなる(=水にひたっている時間が長くなる)ほど泥がやわらかくなる。連続的にやわらなくなるので、気がついたときには沼に埋まっている感じ。開けてくる(樹木密度が小さくなり明るくなる)場所と泥が柔らかくなる場所との間には相関があるようにおもわれる。明るくなったなとおもったら、泥深さに気をつかおう。
- 場所を他人と確認できるように:救援隊を派遣してもらうため。Google mapsにて相互に位置を確認する設定を利用するといい。ただし、救援隊も遭難することがあるので慎重な対象は必要。
- 水と飴が世界を救う:マングローブは蒸し暑く体力と水分を消耗する。海に近づけばマングローブは少なくなるが、泥が深く柔らかくなりやはり体力を消耗する。必ずペットボトルに入れた水を1.5L以上持参すべし。
- Google mapsはあまり当てにしないほうがいい:マングローブや干潟は地図モードだと海の中になる。衛星写真モードでも自位置くらいしかあてにならない。ベトナムにおいては衛星写真モードにて拡大しすぎると
- いつもどこかに目印を:自分がどこにいるかおよその検討をつける自然にない色がついた目標物があれば、あったほうがよい。今回は干潟沖合に立てられたベトナム国旗が役に立った。しかしこれもあらかじめ周囲を陸側から下見して旗があったことを確認したからたまたま役に立っただけである。上陸する桟橋橋脚だとおもったら遠くにある似たような色をした樹木であるという珍事が発生した。これは精神的にこたえた。目印は色がついたものを。
- 体力は最大の武器:進まないことには助からない。体力は必要。水や観測機器を背負って1kmを連続して速足でランニングできるくらいには体力がないといけない。特に沖側にあるゆるい泥は深くゆるい。といって足を持ち上げるには重たいし深いだけで絶望である。地上を歩くよりも何倍も体力を消耗する。できれば日頃から練習したい。ないしは干潟をトレーニングセンターとして開拓したい。
- 荷物は軽く:必要以上に荷物が重いと歩けなくなる。なるべく軽く。背負える入れ物に入れること。といっていちいちいろいろ取り出すのは面倒。別途にたすきがけで持ち歩くことができる小さな袋を用意するといい。
- ドライバッグの空気は重要:背負える入れ物は、ドライバッグがよい。泥がついても洗うことができる。空気を閉じ込めることができるならば、空気を閉じ込めておいたほうがいい。軽いので邪魔にはならないし、いざ潮位が上昇したときに浮袋がわりに使うこともできる。
- ノンラーは不向き:木の枝にひっかかる。マングローブ内においてはつばが柔らかい帽子が向いている。ノンラーは頂部に全周カメラを取り付ける加工が容易であるから、悩ましいところである。干潟のように引っかかるものがないところはノンラー最高。ノンラーなら雨も避けられる。なんといっても安くて上部。ノンラー最高。
機材は大切に
- カメラ:さすがに丈夫で、こわれたカメラはなかった。充電できなくなったカメラがあったが、原因不明。充電器を使うと充電できたので、カメラ内部に若干問題があるだけであるみたい。カメラを1台なくなったことは、記録すべきだろう。一度なくすと泥にまみれてまず見つからない。目立つ色のフロートでもつけておくといいかもしれない。撮影した写真が1枚もなく紛失したデータがなかったことはまことに不幸中の幸いであった。
- GPS:われわれが使用したGPSは、防水ではない。水に浸かれば壊れるし泥でも同様に壊れる。2018年9月には1台が泥に使ってこわれてしまった。ストラップが長くかがむと水につかってしまうらしい。こわれないまでも泥がついた手で触るなどして本体が汚損する。データをとりだすためのUSBポートに泥が詰まるとデータが取り出せなくなるため往生する。小さなジップロックに封入して使うことにしたところ、汚れることもなくなった。
- 三脚と腕:泥をかんでしまい収納がスムースではなくなった。毎日必ずていねいに掃除する。宿泊所にあるティッシュ量は限られている。キムワイプやティッシュ、濡れティッシュは持参したほうがよい。
調査費用は精確に記録しましょう
- 物価高騰には驚かされる。消耗品にする竹竿価格は昨年比150%になった。現在の価格は30,000VND/5m。たいしたことがないように見えるが、これを数十本使うのでかなり気を遣う。水は1箱80,000VND/24本くらい。まぁ相場通りであろう。日頃かかる食費もジワジワと物価上昇している。とくに果物は価格上昇がすさまじい。バインミーなど生活に密着する食品はさほどでもなかった。
展望編
漂着ゴミ分布グラフと記述統計量
tidyverseなデーララングリング練習がてら、12つある調査区各々に散乱するゴミ重量について記述統計量を算出しますよ。
コードが全般に冗長。もうすこしキレイに書きたい。みせてもいいけれども、長すぎるし半分以上はデータ前処理。自分自身以外にとって参考にならなさそうなので割愛。
秤が計測できないほど軽い(しかし間違いなく0gではない)ゴミを反映させるために、\(weight\)に1を足した。
懸案のビニール袋のみについて、記述統計量を検討し作図を試みる。画像はクリックすると大きく表示される仕様。
まずは記述統計量。
# 調査区別ビニール袋重量記述統計量算出
quadrat.summary <- scattered.items.fy2018.sub %>% dplyr::group_by(quadrat, lon.deg,
lat.deg) %>% dplyr::summarise(n = n(), min = min(weight + 1), max = max(weight +
1), mean = mean(weight + 1), median = median(weight + 1), sd = sd(weight +
1), sum = sum(weight + 1))
knitr::kable(quadrat.summary, format = "markdown")
quadrat | lon.deg | lat.deg | n | min | max | mean | median | sd | sum |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
220 | 106.1799 | 9.438209 | 46 | 1 | 91 | 16.478261 | 10.5 | 20.692177 | 758 |
410 | 106.1802 | 9.437301 | 57 | 2 | 98 | 21.508772 | 17.0 | 19.148968 | 1226 |
729 | 106.1810 | 9.438390 | 23 | 1 | 23 | 4.869565 | 2.0 | 5.675340 | 112 |
822 | 106.1808 | 9.438889 | 31 | 1 | 53 | 7.064516 | 2.0 | 11.156270 | 219 |
1132 | 106.1815 | 9.436757 | 20 | 1 | 23 | 6.300000 | 3.5 | 6.497773 | 126 |
1138 | 106.1815 | 9.439842 | 17 | 1 | 122 | 32.000000 | 20.0 | 33.826765 | 544 |
1280 | 106.1818 | 9.439116 | 40 | 1 | 141 | 7.950000 | 2.0 | 22.541074 | 318 |
1554 | 106.1823 | 9.436757 | 38 | 1 | 133 | 17.157895 | 7.5 | 28.020771 | 652 |
2072 | 106.1832 | 9.438390 | 32 | 1 | 28 | 7.250000 | 5.0 | 7.653799 | 232 |
2085 | 106.1832 | 9.439570 | 55 | 1 | 86 | 8.309091 | 2.0 | 14.303422 | 457 |
2090 | 106.1832 | 9.440023 | 80 | 1 | 164 | 10.175000 | 6.0 | 19.458996 | 814 |
2280 | 106.1836 | 9.439116 | 21 | 1 | 63 | 13.952381 | 5.0 | 17.010221 | 293 |
中心傾向から、ほとんどのビニール袋は軽いことが示唆される。おおむね2gから5g程度であろう(もっと統計量をまじめにチェックしようね)。500mlペットボトル(30g前後)や350mlスチール缶(25g)、350mlアルミ缶(15g)よりは軽く、ペットボトルのキャップ(2.5g程度)と同程度である。
まれに重いビニール袋があることも示唆される。これは濡れているため重量がかさんだゴミがあること、原型を保ったビニール袋と破片とかしたビニール袋が混在すること、飼料袋のような大きな袋(およびその切れ端と考えられるビニール片)もビニール袋と勘定したことが理由と考えられる。ビニール袋分類を再検討する必要があるかもしれない。
ヒストグラムと密度関数でも分布を確認。
やはり全調査区画にて、ほとんどのビニール袋は軽いがまれに重いものが混在することが確認される。こうした事実は、ビニール袋が断片化する過程を示すかもしれない。当初は比較的重量があるビニール袋であるが、なんらかの要因で分解されて軽く小さい多数の断片となったことが想定される。
調査区毎のビニール袋(とその断片)重量。
場所差が大きいようである。区画410番は1,000g以上もビニール袋が散乱するが、区画729番や区画1132番は100g程度である。かくも散乱する数が異なる理由が気になるが、いまは表現だけにとどめておこう。
散乱するビニール袋数と重量との間にはなにか関連があるやもしれぬ。散布図を作成した。
ゴミが多いと重さも多いというあたりまえの関係性が見いだせるようにおもわれる。点が少ない(調査区画数が少ない)こともさることながら、どうも直線状に乗っているようには見えない。ゴミ数が多くなるにつれて重量がばらつく様子が気になる。単純な線形回帰ではたぶん太刀打ちできない。かりにビニール袋のみで1kg以上ある店を除去しても、やはりなにか背景がありそう。
場所差といえば地図上にもプロットしないと。
どうも積極的に場所差があるようには見えない。心持ち、桟橋から遠くなると拾ったゴミが重くなるということが言えないような気がしないでもない。干潟からの距離にもみえないことがない。とりあえず双方を検討しようか。以前は植生の境目かな、と考えていたけれど、その線はあまり考えなくてもよいかもしれない。植生については、植生図データが仕上がってくるのを待とう。いやはや、一人親方はつらいです。
とりあえずここまで。
このあとすること
以下にこれからすることを列記。うーむ。これから繁忙期だけれども、なんとかしょましょうか。一人親方はつらい。
- ログデータ解析
- データ整理
- 作図
- 方角を考慮したモデリング
- 論文執筆
- ごみ重量と分布推定
- ごみ回収費用を考える
- 漂着ゴミ画像診断
- 画像を切り出し面積を計算する
- 密度を算出する