藤野哲也のロンドン・レポート

ロンドン・レポートNo.11 「 ”CAERDYDD”は NEWPORT!」


 日本企業の現地法人調査でウェールズへ行った。ウェールズの首都、カーディフはウェールズ南部の海岸線に面して、イングランド寄りに位置している。ロンドンから西へ230キロあまり、一つ手前のニューポートで215キロほどの距離にある。ロンドンからインター・シティ(特急)で2時間である。

 行きはニューポートの駅で降りたのだが、列車が駅に着いたので降りようと思って見ると駅名が、

CAERDYDD
NEWPORT

となっている。

 思わずハッとして、しまった!ニューポートにはいくつか駅があったのかという恐怖が頭をかすめたが、とにかく勢いで降りてしまった。しかし、ホームに降り立ってみると、どうもここでいいようでもある。

 その時、事前に読んだ案内書のことを思い出した。ウェールズでは英語とウェールズ語が併用され、併記の仕方もウェールズ語が上、英語が下なのである。だから、ここはニューポート、正解であった。それにしても上のウェールズ語の方は一体どう読むのかと思い、タクシーの運転手に聞いてみたら、読み方は忘れてしまったが、意味がニューポートであると言う。だから、むしろ、ウェールズ語で新しい港という意味の地名なので、英語でニューポートと呼ぶようになったと言うべきであろうか。

 いずれにせよ、この子音だらけの言葉のどの部分かがNewを意味しており、残りがPortを意味しているのであるから、ウェールズ語というのは凡そ変わった言語ではある。ドイツ語でもフランス語でも、あるいはイタリア語でも、「新しい」はNで始まり(Neue、Nouvelle、Novo)、「港」はPortに似た形ではなかっただろうか。帰ったら誰か、歴史や言語学に詳しい人に聞いてみたい。

 夜ホテルに入ってテレビをつけると、これがまたウェールズ語放送であった。後で聞くと、一日中ではなく夕方から夜の 5ー6時間だけウェールズ語放送を流すらしいが、とにかくこれが全く分からない。パリに行っても、ミュンヘンに行ってもテレビ番組を聴き取ることは難しいが、それでもつけ放しにしておくと時々英語と似た単語があったりするものであるが、ほんとに完璧にわからない。その上、何と英語の字幕が画面に表示されるのである。うーん、英語の字幕かあ!と、これはほんとに感心してしまった。

 今まで、ワールドカップ(サッカー)に英国からイングランド、スコットランド、ウェールズと複数の予選出場を認めるのは全く馬鹿げたことだと思ってきたが、英語の字幕付きウェールズ語放送を見てしまうと、やはりこれはちょっと感覚が違うのかなと考え込んでしまった。

 しかし、翌朝のタクシードライバーに、いやーテレビ放送がウェールズ語だから全然分からなかったよという話をしたら、俺だってあんなもん分からんよという。何だウェールズ人じゃないのかと聞くと、いやそうだけどね、あんなもん分かるのは年寄りや奥地の連中で、イングランドとの(国)境に近いわれわれなんかはわからないのさ、と言う。

 ワールドカップ予選への複数参加を認めるべきかどうかの答は、結局よくわからないのであった。

 Dec.19,1997

 ロンドンにて 藤 野 哲 也




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