藤野哲也のロンドン・レポート

ロンドン・レポート No.14 「 何でもゴミ捨てポイ ・システム 」


 日本の友人からのリクエストにお答えして、環境問題を少し論じてみたい 。というのは大袈裟な話であって、実は極めて卑近な話をしようというの である。質問はイギリスでは産業廃棄物処理はどうなっているかというも のであったが、勿論そんな質問に答える知識はないので、生活者としての ゴミ処理問題にすり替えることにする。

 少し前の話になるが、ロンドンをあちこち歩き回った挙げ句にやっとのこ とで居を定めフラットに入居した時、まずはゴミ捨てについて聞いたのは 最近の一人暮らしで身につけた知恵である。決められた日以外にゴミを出 したり、延いてはそれが積み残されて悪臭を放ったりしたのでは善良な隣 人の皆さんとの友好関係も崩れようという外交的配慮からであることは言 うまでもない。

 不動産屋はゴミの捨て場所を教えてくれた。我が家は横にずらっとつなが った古くからのアパートの一室なのだが、各家(階段)の前に専用のゴミ 用ポリバケツが置かれており、その中に捨てればいいということであった 。ポリバケツは一軒にひとつの見当で置いてあるので、三階の我が家は三 番目のを使えばいいのだなと見当がつく。生ゴミは何曜日とかの決まりは どうなってるのという点については、特に決まって無いんですよ、と躱さ れてしまった。しかし、集収日でもないのに出して臭ったりしてもいけな いし、不安である。

 折よく顔合わせた階下の若奥さんや上の階のおばさんにその点を確認して みたが、若奥さんの方はそうなのよ、何時でもいいのよ、ということで実 にあっけらかんとしている。いや、日本では生ゴミは火曜日、金曜日、プ ラスチックは水曜日という風に分別した上に曜日が違うもんですからと言 うと、さすがにおばさんの方は気がついて、「私たち(イギリス人のこと )はもう少しそういう問題に自覚を持たなきゃいけないって思ってはいる んだけど」と、事は国の威信(信用?)に関わることに気がついた風であ る。

 「けど、とにかく今のところは何時何を出してもいいの」だそうである。 ガラスとか、蛍光燈とか危ないものもいいんですかと聞くと、とにかくあ のポリバケツになんでもかでも突っ込んでいいという。危ないじゃないか 、と思ったが彼女にそんなことを言っても仕方がないので、礼を言って別 れた。

 初めは半信半疑だったが、朝たまに窓からゴミ収集の様子を見ていると、 収集車に先立って先触れがやってきて各フラットの前からポリバケツを道 路脇に出していく。後から収集車がやって来て、どんどん収集していく。 収集車はその容積ざっと日本の2倍はあろうかという大きさである。 例の回転する刃がついていて片っ端から飲み込んでいく方式は同じである 。時々古新聞や雑誌類も出すが、みな一緒くたに巻き込まれていく。凄い パワー、迫力である。ポリバケツはゴミ収集人が元へ戻しておくので、住 民はほんとに片っ端から捨てるだけで、ポリバケツにすら触らないのであ る。

 あのガラスからペットボトルから生ゴミから古新聞までのごちゃ混ぜゴミ はあの後一体どうするのか。いろんな物がよく混ざっているからよく燃え るとも考えられないし・・・・・・・・・不思議である。ああなってはも はや分別は難しいであろう。ゴミ焼却場なんて見かけないなあと言う人も おり、その辺は謎である。

 こんな国が世界環境会議 で一体何を発言するのか。興味がないので 見過ごしてしまったが、やはり先進国のカテゴリーに入っていたのであろ うか。

 March 14,1998

 ロンドンにて 藤 野 哲 也




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