藤野哲也のロンドン・レポート

ロンドン・レポート No.20 (総集編) 「 炭坑の穴、トンネルの穴、そして ”Enemy’s enemy is a f riend!”」


 まず若干の補足から。以前に書いた英国のゴミ捨て方式に関する追加情報 である。それはゴミの処理方法、捨て場所である。英国ではあまりゴミ焼 却場らしき煙突を見かけないので海洋投棄かとも思われたのだが、通産省 筋から聞いた話では何と意外にも炭坑の廃坑に埋めてるのだと言う。

 これは全く盲点と言うか、予想外であった。第一、毎日家庭から出る膨大 なゴミを埋める穴がそんなに沢山あるのかと言うと、国中にいくらでもあ るんですよ、との答え。確かに、石炭はかつて英国の一大産業であったし 、各地に炭坑の跡がある。実際、スコットランドやウェールズにある日本 企業の多くは旧産炭地の産業誘致用の工業団地(Industrial Estate)にあると言っていいくらいである。廃坑も沢山あるには違 いないが、ダイオキシンで揺れる日本の現状から考えれば夢のような話で ある。無公害?

 丸い地下鉄の穴(Tube)についても、パリ、ベルリンとの比較をして おきたい。パリの地下鉄の穴も丸いと言えば丸いが、上下線が並んで走る ために、穴(トンネル)自体の形は横長の楕円形になっている。ロンドン の地下鉄のように真ん丸の穴から丸い地下鉄車両が出て来るという印象は ない。

 ベルリンの地下鉄のトンネルは四角であった。車両も四角い日本と同じタ イプである。上下線が並んで走るので正確に言えば穴の形状は長四角であ る。駅の部分も天井は平板であった。丸型でない地下鉄に乗ったのは久し 振りである。

 こうしてみると、ロンドンの地下鉄は車両や穴の形状が丸いこともさるこ とながら、どうも上下線がそれぞれ別々の穴(トンネル)になっているの が変わってるようである。ロンドンの地下鉄に乗っていると、時々耳が痛 くなることがあるが、これもその所為である。チューブのような細く長い 丸穴の内側を穴にぴったり合った丸い形の地下鉄車両が高速で走れば、物 理学的に言って当然のことであろう。

 因みに、ロンドンの地下鉄の車両には非常警報機(Passenger Emergency Alarm)はあったけれど、非常の時に扉を 開ける仕組みはないようであった。開けた所で外は壁、それも丸い車両に ぴったり沿っているので、車両から出ることはできない。壁を走るパイプ 、電線の類に触れるぐらいのものである。車両と車両の間の移動もできな い(連結器の上はブロックされていて通れない)ので、乗ったは最後、次 の駅まではその車両から降りることは絶対にできない。従ってロンドンで は何があってもその車両と運命を共にする気持で乗る場所を選ばねばなら ないのである。

 料理の味についてはベルリンその他ドイツの街でもそこそこの値段でそれ なりの味が楽しめたことを報告しておこう。つまり、料理に関しては英国 、ロンドンは一人負けなのである。ドイツも決して料理の味を誇れるよう な国とは思えないが、そのドイツ人が皆、イギリス人と比較されるなんて 不愉快だという顔をした。

 この点では随分イギリスに厳しいようだが、スコットランド人の友人から 叱られるかもしれないので、同じ英国でも非は特にイングランド(人)に ついて言えるようだと付け加えておくことにする。何しろスコットランド 人と言えば、「Enemy’s enemy is a friend! 」=敵(イングランド)の敵(フランス)は友人と いうことでイングランドよりはフランスに親近感を抱いている節もあり、 イングランド並みという評価をすると身が危ないのである。

 さて、ロンドン・レポートも20回を数えやっと終わりになった。10ヶ 月で20回ということは月に2回ずつ報告をしてきたことになる。これは ウェブ・マスターの所為である。ひとつには人を何とかその気にさせ、適 当に褒めるなどしてやらせるということ、もうひとつは掲載されるホーム ページの出来がいいのでそれを汚すような形、質のものはちょっと書けな いということである。最後にこんなに褒めてしまって・・・・・・・、帰 ったら偉大なるウェブ・マスターに褒めてもらおう。

 June 13, 1998

 ヨーロッパを去るに当たって 藤野哲也




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