概要
はじめに
宇都宮研究室は、労働に関する研究をすすめます。東南アジアにおける諸問題も取り扱います。諸問題に対峙するため、当研究室はデータを重視します。データそれ自体は数値の集合ですが、社会経済的意義を含むことがあります。当研究室は再現性を担保しながらデータにひそむ意義を見出し、人類社会に貢献することを目指します。
データは当方から与えます。しばしば自らフィールドに出向いてデータを収集する必要に迫られることもあります。フィールドに出るにはお金もかかりますし、しばしば酷寒と酷暑にさらされます。
データから社会科学的に有意義な発見を得たり意味ある結論を得るために、統計解析手法や統計解析環境に関する学修は必須です。計算を楽にするために、統計解析環境についても学ぶ必要があります。統計解析環境は、当方より提供します。
文献から既知の知見を仕入れることも重要です。文献は日本語である場合もありますが、英語が圧倒的に多いです。孤独と戦いながら、地道にコツコツ成果を積み上げる作業が要求されます。
上記作業が得意な方や好ましいと考える方には、当研究室は向いているでしょう。
目的と対象
宇都宮ゼミナールは、以下を目指します。
- 人的資源管理に関する学説を学ぶこと:人的資源管理とは、経営資源としての労働力をどう取り扱うかに関する領域です。採用や教育訓練、賃金、その他色々様々な領域を内包します。いくつか主要な学説や法令がありますから、まずはこれを学びます。
- 関連する手法を獲得すること:文書作成やデータ整理、統計解析など、研究に必要な技術はたくさんあります。特にデータ処理は大変です。Microsoft OfficeだけでなくRという統計解析環境も使います。
担当者
- 氏名:宇都宮 譲(うつのみや ゆずる)
- 生年:1975(昭和50)年8月17日生まれ。インドネシア独立記念日。
- これまで取り組んだ研究:
- 造船業における熟練形成:学生時代から2010年までやっていた研究。作業研究で熟練者に要求される職能を明らかにします。合同導入訓練についても調査して報文を書きました。わたしという存在をくらいは規定した経験でした。残りは卒業したゼミ生と家族、いままでやった仕事がずつでしょうか。
- 進出企業における定着:2010年から2013年頃までやっていた研究。タイやベトナムに進出した企業における定着促進策を明らかにする。結局、1980年代までのわが国生産職場がお手本でした。ふと国内に目を転じると、多少アレンジしておなじようなことをしているようにみえます。
- 人的資源量推定:2014年くらいからいままで続いている研究。だれも手がつけないタイ官庁統計を使って、働けそうな人々の数を推定する。統計学のおもしろさと奥深さを再発見した研究。受賞作はいずれもこのジャンル。
- 漂着ゴミ問題:ODAにかかわるようになってはじめた研究。メコンデルタ地方(ベトナム)の海岸に分布するゴミ重量・数を推定する。おそろしい量が落ちている。ビニール袋は減らしましょう。自然科学研究に近づくきっかけ。フィールドはたのしいな。
- JICAもの:カントー大学強化附帯プロジェクトの一貫。大いに学ぶところがありました。
- R講習会:統計解析環境Rを紹介しながらちょっとつかってみる講習会。カントー大学(ベトナム)にて実施。近頃はいろいろなところから引き合いがあります。実は人気があるのはこのジャンル。Rを使えば統計解析も作図も文書作成さえ楽勝。あとはアイディアだけ。R大好きやばたにえん。
- 生態系サービス推定研究:生態系サービスは、自然が人類社会にもたらす価値の総称。ベトナム南部とカンボジアで研究に着手。わたしの担当は官庁統計を整理すること、調査技法を伝授すること。調査研究設計も少しやりました。
- 担当科目
- 労務管理論
- 経営概論(夜間主向け。2022年度まで)
- 現代の労働と労働組合(夜間主向け。2022年度まで)
- その他もろもろ。時間割にやシラバスにて確認できない、部分的に担当する科目たくさん。
研究室特徴
比較的少ないメンバー数:だれも配置されない年もありました。研究者を寡占しながら勉強できます。
指導教員は出張多め:共同研究が多いこと、研究における主戦場が東南アジアであるためです。その他いろいろ用事が多く、腰が落ち着きません。戻ってからもデータ処理や後始末で、なかなか手が空きません。
内容
統計解析
わが国労働統計取り扱いと統計学に関する基本的な概念、基本的な統計解析手法です。すなわち、
- 官庁統計種別
- 確率と確率分布
- 標本抽出
- 記述統計量
- 確率分布の図的表現
- 区間推定・統計的仮説検定
- 実験計画法と分散分析、多重比較
- 回帰分析と線形モデリング
- 時系列分析
- 分類:kmeans法によるクラスタリング
を予定します。さしあたり、官庁統計をRからAPIをたたいて読み込めるようになることからはじめます。わからないことがあったらお問い合わせください。「まったくわかりません」ではなく、「~について○○○がわからん」と具体にお示しください。
Rという統計解析環境を用います。Rは世界中で使われており、日本語や英語で書かれた情報があふれています。自習もできますが、本研究室は上記内容と副読本に書いてあるグラフや分析結果をRを用いて再現することで学びます。
RStudioは、Rを使いやすくするためのIDE(統合開発環境)です。当研究室が管理するサーバにインストールしたRを、学内外から使っていただきます。
教科書購読
HRMに関する教科書は、洋書が圧倒的にすぐれています。Introduction to Human Resource Management (3rd. Ed.)という文献を読みます。ただし、教科書は欧米(欧州半分米国半分)における社会に関する背景知識を要求します。日本社会について教科書内容をそのまま援用することはよろしくないです。日本社会における現状については、官庁統計や日本に関する文献を用いて学びます。
教科書講読は、いわゆる輪読です。担当箇所を決めて内容について発表していただきます。発表資料は以下を含む必要があります。詳細をA4用紙に書いてくばってください。印刷は第二研究室でされるといいでしょう。PPTは不要です。
- 要旨:内容を要約してください。感想などを混ぜず、中身になにが書いてあるか精確に表現してください。
- 考察:内容から貴君が考えたことを書き出してください。抽象的な話でも結構ですが、日頃の生活に引きつけていただいてもいいでしょう。
- 要旨逐語訳:精読する練習もしましょう。
懸賞論文投稿
長崎大学経済学部には、懸賞論文が存在します。賞金は1等5万円、2等2万円、3等1万円だったような。いい作品を書いて評価されれば、お金がもらえます。卒業論文執筆にとっても、いい腕試しになります。
本研究室は、小職が承認した原稿を提出することを義務として課します。承認・提出されなかった場合、本職は専門ゼミナール成績評価をしない権利を留保します。
論文執筆過程は以下の通りです。
- テーマを決める:テーマは差し上げます。諸君が考える必要はありません。研究に不慣れな方は、もらったテーマで論文を上梓するところまで味わってください。
- 既往研究を集めながら論点をしぼる:数多く読む必要があります。和文でも結構ですが、外国雑誌に掲載された論文がおすすめです。
- 仮説を考える:仮説とは、おそらくそうなるであろうと予想される事柄です。検証されると仮説は学説へと変身します。そして次の研究の仮説になります。
- 仮説を検証するためのデータをあつめる:仮説を検証するには論拠が必要です。論拠を集めるには、質問票を配る、ヒヤリングに出かける、観察するなど、多彩な方法があります。数字になっていると扱いやすいでしょう。
- 分析する:論拠が語ることの一部を表現します。論拠はそのままではなにも語りません。わたしたちは、社会現象の一部を人間が理解できる言語や根拠で表現する必要があります。事実だけを書き出しましょう。
- 考察する:事実がもつ意味や意義を考えます。
- 文書にする:以上を文書にまとめます。執筆過程で原稿を小職へ提出してください。最低でも3回は原稿が往復されるはずです。最初は様式に関する指摘のみですが、次第に内容に関する議論がはじまるとたのしくなってきます。親御さんや友人に見せてもいいでしょう。
- 提出する:決められた提出先に提出します。納期厳守です。納期厳守しないと受け取ってもらえません。
卒業論文執筆
本学学生は、卒業論文を執筆して提出する義務があります。懸賞論文執筆とおなじ手順で執筆します。卒業要件です。
一問一答
いくらくらいかかるでしょうか:
- 教科書:無料のものを使います。英語。
- 資料:インターネット上にある教材と雑誌論文を購読します。
休めますか:本学が要求する条件さえ満たしていれば結構です。その他、いろいろな用事がある場合、事前に教えていただければ休んでも構いません。ただし発表にあたっている日は休んではいけません。就職活動については、就職活動終了後に活動報告を要求するかわりに、期間中は欠席しても結構です。
公務員試験を受験したいです:公務員を目指す方は、他ゼミナールに所属されますことをおすすめします。日本国憲法第22条が定める職業選択の自由は尊重しますが、本研究室が提供する学修内容とはなじみません。特に、いわゆる公務員試験専門学校に通われる方は、時間配分を考えれば本研究室に所属しないほうがよいでしょう。
日頃はどう連絡をとりあいますか:MSTeamsを使います。本学が提供するMSアカウント(bbではじまり@ms.nagasaki-u.ac.jpにて終わるアカウント)で使えます。
PCは上手に使えるようになりますか:使っていればそのうち使えるようになります。MSExcelで使う一通りの関数は覚えるでしょう。Rについては論文を書き始めればおぼえます。できなければ論文が書けず、卒業が遠のくだけです。
添削なんて意味あるんですか:あります。論理的にクリヤな文書を書くことができるようになります。文章は誰が読んでも誤解なく内容が伝わればよい、名文は不要と割り切りましょう。
研究室に出入りすることは義務ですか:義務ではありません。あまり近寄らなかった方々も多いです。とはい、せっかくある設備を使わない方は、“So so , also so einer bist du.”(Hermann Karl Hesse “Jugendgedenken”)とみなされても仕方ないでしょう。
就職活動支援はありますか:ありません。ご自身でされたいようにされるといいでしょう。
宇都宮先生が開講する講義は必ず履修しないといけませんか:必要があったら履修してください。履修しなくても結構ですが、講義にて展開する内容を所与として話を進めることがあります。
その他、履修したほうがよい科目はありますか:学部共通科目「統計学」成績評価において、AAないしAを獲得することを強くおすすめします。当研究室が取り組む内容は、統計学による成果に依存します。
宇都宮先生怖いんですよね:真摯であろうとするのは科学に対してのみです。対人関係や個別のご事情には関心がありません。
就職におけるコネとかありますか:ありません。自らの力で世渡りしてください。
宇都宮先生は大学にいますか:平日8時30分から21時くらいまで在室します。翌日に魚釣りに出かける日などは、18時くらいまで在室します。近頃は出張が増えてきました。研究室どころか日本にいないことも多くなります。SNSで連絡をとることや、在室する時間帯を狙って訪問することに慣れて下さい。
学生研究室はありますか:廃止しました。研究室がありますから、必要ならご利用ください。Wi-Fiと机、ホワイトボード、冷暖房など完備。書架とコーヒーメーカーも使えます。あとは勉強するしかありません。学生時代は勉強だけしていても叱られない貴重な時間です。よくよく活用してください。
してはいけないことはありますか:コピペ。小職がコピペとみなせばそれがコピペです。判定ソフトなど迂遠なソフトウェアは用いません。検索エンジンにかけて、疑わしい出典がみつかればコピペです。成書が役立つかもしれません。一般的な研究倫理に触れるような行為は厳しく禁じます。発覚した場合、成績評価をしない権利を留保します。
どのくらい学修時間が必要ですか:専門ゼミナールのみにて8時間/週は必要です。最初のうちはもっと長い時間勉強しないと、ついてこられないでしょう。寝ても覚めても研究と解析や論文について考えるようになれば一人前です。
服装等に注意はありますか:あります。だらしない格好、染めた頭髪、されたい方は他研究室をあたってください。
単位修得後、長崎ではない場所に住みながらゼミナールに参加できますか:できません。いかなる事情があっても控えてください。当研究室における研究は、生易しくありません。さようなご事情でしたら、他研究室をあたっていただいたほうがよろしかろうと存じます。以前認めたこともありましたが、前例は一切踏襲しません。
選考方法
概要
GPAと面談にて選考します。
GPAは学力が担保されるか検証するために実施します。GPAは2.0以上を要求します。応募者多数である場合、GPAが高い方から規定人数を採用します。これまで規定人数を満たしたことは、2回しかありません。
GPAは、日本学生支援機構(JASSO)が定める方式にて算出してください。長崎大学が用いるGPA算出方式とは異なります。
算出結果は、小数点第3位を四捨五入してください。GPA算定根拠となる資料共々、面談時に書面(様式自由)をもって申告していただきます。
面談は無用なトラブルを避けるために実施します。肌に合わないと感じたら、他をあたりましょう。相性は重要です。本職は特に、以下を重視します。
- 納期厳守:決めた納期はいかなる事情があろうとも必ず守ること。時間はだれにとっても公平に与えられる資源です。これを浪費することは他人がもっている資源を不当に簒奪することを意味します。
- 品質重視:作成する資料は要件を満たすこと。上記要件を満たすこと。
- 作業指示:大学が要求する書面は可及的速やかに提出すること。
注意
面接は0.5時間程度を要します。0.5時間を超えたら、有無を言わさず打ち切って下さい。席を立っていただいても結構です。
おしまい。
初版作成:2019年09月4日
第2版作成:2021年09月13日
第3版作成:2021年12月3日
第4版作成:2022年01月4日
第5版作成:2022年09月20日
第6版作成:2023年09月20日